更新日:2008年9月17日
Vol.251:県外編 室生寺(奈良県宇陀市)

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緑に包まれた優美な五重塔

写真 奈良県の東部、三重県との県境にある宇陀市。2006年、大宇陀町・菟田野町・榛原町・室生村の3町1村が合併してできた同市は、万葉の時代から栄え、中でも名刹(めいさつ)の室生寺があることで知られている。
 国宝の五重塔で有名な同寺に訪れた。8世紀末ごろの創建。女性の参拝を受け入れた真言密教の寺院として親しまれ、高野山金剛峯寺に対して「女人高野」と呼ばれている。
 近鉄大阪線の室生口大野駅を下り、奈良交通バスで15分ほどで室生寺前へ。門前に参拝者向けの茶店や土産店が並び、名物の草もちなどを求める人でにぎわっている。室生寺に魅せられ、生涯にわたって撮影に通った写真家・土門拳ゆかりの旅館もある。
 室生川にかかる朱色のたいこ橋を渡り、境内へ。昭和に再建された仁王門をくぐると、石積みの急な石段=写真(1)=が迫ってくる。「鎧(よろい)坂」と呼ばれており、4月から5月にかけてはシャクナゲ、秋はカエデやモミジによって鮮やかに彩られ、参拝客を圧倒する。
 登り切ると正面に金堂が見えて来た=写真(2)。平安初期の仏堂で、国宝の釈迦如来立像、十一面観音菩薩立像などが安置され、平安美術の宝庫だ。気品あふれる仏像に、そっと手を合わせた。
 石段をさらに登ると、弘法大師が一夜にして建立したという伝承が残る五重塔=写真(3)=が姿を現す。高さ16.2メートルと屋外の五重塔では日本最小だが、周囲の深緑と調和し、優雅な美しさをかもし出している。10年前の台風で損壊を受けたものの、速やかに修復工事が行われ、再び優美な姿で楽しませてくれる。
 五重塔から先、奥の院まで、さらに長い石段が続いている。ここまで来たからには引き返せない、と息を切らしながら20分ほどかけて駆け上がると、奥の院がひっそりとたたずみ、そこから周辺の山々が見渡せた。
 朱印所で記念にお守りを買ったところ、ご朱印帳を親子3代で書き続けているという中村一誠さん(72)=写真(4)=が「ここまで登った記念に」と袋に経文を書いてくれた。ご利益がありそうだ。
 駅までの帰り道に、「葛(くず)切り やま
が」に寄ってみた。かやぶき屋根の古民家が目印で、日本最大級の弥勒磨崖仏で知られる大野寺の隣にある。名物の葛切り=写真(5)=が頂ける。仏壇職人の岸本彰夫さん(79)が本職の傍らに始めた葛専門の甘味処で、地元産の天然の葛が用いられている。徳島産の和三盆の黒みつとからまって、さわやかな歯ざわり。参拝の疲れが癒やされた。
 近鉄「室生口大野駅」へは、京都から大和八木経由で約1時間半。室生寺の拝観料600円、問い合わせは(0745・93・2003)。やまがはバス停「大野寺前」下車。葛切り1200円。問い合わせは(0745・92・3355)。

※この記事は、朝日新聞読者にお届けしている「あいあいAI 」(滋賀)に掲載されたものの転載です。

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