


かつて湖上交通の要所として栄えた大津市堅田で、平安時代から舟の水運、漁業を仕切り、圧倒的な力を有した居初家。小林一茶ら、時代の教養人も魅了したという庭園を訪ねた。
湖岸近くの古い町並みが残る通りを歩くと、ひときわ目立つ白壁の建物がある=写真(1)。29代目当主の居初寅夫さん(82)に案内され、真っすぐに延びた敷石を進むと、突然視界が広がった=写真(2)。東側の石垣は琵琶湖に接し、松、サツキ、モッコクなどが植えられている。茶人・藤村庸軒と、庸軒の弟子で地元の郷士だった北村幽安の合作で、1681年ごろに作庭。1981年に国指定の名勝庭園となった。208坪の庭園は枯山水で蓬莱神仙の思想に基づき、向かって右に亀島、左に鶴島が配されている。
次に茅葺(かやぶき)入母屋造りの茶室に入る。ここからの眺めが、まるで自然の風景を切り取ったように見えることから、天台宗の学僧六如(りくにょ)上人が「天然図画亭(てんねんずえてい)」と命名。庭園の背景に広大な琵琶湖、さらには三上山を始めとする対岸の山々が広がる=写真(3)。まるで絵のような景色に時間を忘れて見とれた。
居初さんは「茶室から見る景色と木々の間から見る茅葺の屋根が一番いい。新しい建物が増えて、対岸の景色が随分と変わってしまいました」と少し残念そうに話した。
琵琶湖からの心地よい風を受けながら、時代の移り変わりに思いをはせた。
JR堅田駅から徒歩15分、またはバス末広町下車徒歩3分。午前9時〜11時半、午後1時〜4時半。拝観料大人500円。要予約。問い合わせは(077・572・0708)へ。