極細の麻糸を織り上げた麻織物の最高級品「近江上布(じょうふ)」。国指定の伝統工芸品だ。愛荘町は鎌倉時代からその技術を育んできた。同町の秦荘地区は、上布とともに同じ技法で作られる県伝統工芸品の絹織物「秦荘紬(つむぎ)」の生産地としても有名だ。その技を知ろうと川口織物会社の「手おりの里金剛苑」を訪ねた。
愛知川のほとりにある約5000坪の敷地には、藍や桑畑、織物資料館などがあり、糸から織物が出来るまでの過程を知ることが出来る。なかでも染織工房では、正藍を使用した染めや機織り体験のほか、伝統工芸士の仕事ぶりを間近に見ることが出来る。
上布は、図案作りから先染め(糸を機織り前に染めること)の設計、絣(かすり)染め、唐巻き、機織り、仕上げとすべて細かな手作業によって作られる。特に「櫛押し捺染(なっせん)」という伝統の技法で行われるのが近江上布の特徴で、櫛のような形の道具を使ってタテ糸を一手ずつ慎重に染めていく。「ひたすら根気のいる作業。それでも納得いくものが出来上がればそんな辛さも忘れます」と伝統工芸士の伊藤富三さん(56)は話す=写真(1)。一つひとつの丁寧な工程を経て仕上がった上布は、しなやかな風合いでなんとも上品だ=写真(2)。工程を説明してくれた若手の小山香絵さん(28)=写真(3)=は、同苑での染織体験がきっかけで職人の道を目指すようになったという。「伝統だからというよりここにしかない美しいものを守りたい。大変ですが誇りを持てる仕事です」。伝統を担う明るい未来を感じた。
手おりの里金剛苑へは車が便利。午前9時〜午後5時(受け付けは午後4時半まで)。休苑日は、4〜11月は月曜、12〜3月は日・月曜。入園料大人310円。
問い合わせは(0749・37・4131)へ。