▲「蟬しぐれ」撮影時の様子=04年。国宝の本堂前で、右奥が国宝三重塔(滋賀ロケーションオフィス提供) 湖東三山の一つ「西明寺」。国宝の本堂や三重塔を有するこの名刹(めいさつ)で、藤沢周平作品の中でも傑作と評判の「蟬(せみ)しぐれ」の映画(2005年、東宝)が04年7月に撮影された。色づき始めた境内を、場面に思いをはせながら散策した。
舞台は東北「海坂藩」。主人公の下級武士・牧文四郎は15歳の時に父を冤罪(えんざい)で亡くす。支えとなった友との変わらない友情、幼なじみのふくを思い続ける愛情の物語を美しい四季とともに描いた作品だ。
尊敬する父の処罰が言い渡される「龍興寺」がこの寺だ。文四郎の人生に大きく異変をもたらした印象的な場面。文四郎が石段を上っていくと二天門(重要文化財)の間から本堂=写真(1)左=が見える。「黒土三男監督が『京都や奈良の箱庭的なお寺を見てきたが思う所がなく、自然と融合し、山中にあるこの寺が龍興寺のイメージと合った』と話しておられました」と中野英勝住職(49)は振り返る。
映画の中での重要な要素が「変わらぬ愛」。文四郎が思い続けるふくと再会する「欅(けやき)御殿」。この表門となったのが国の名勝に指定されている庭園前の門=写真(2)。「寺の壁には格式に応じて横線が入ります。この寺も5本線が入る格式の寺ですが、線は入れず、紅葉の美しさに合わせて黄土色にしています。監督はそこも気に入られたようです」と中野住職。
お互いに思い続けながらついに結ばれなかった二人。ふくは出家することを決意。ラストシーンでは表参道=写真(3)=に立つ文四郎の前をふくを乗せた駕籠(かご)が通る。長い表参道でシーンを思い出し、切ない気持ちで寺を後にした。
入山料大人500円。JR河瀬駅からバスで金屋下車、徒歩約20分(12月2日までJR彦根駅、近江鉄道尼子駅よりシャトルバスあり)。問い合わせは(0749・38・4008)へ。