君待つとわが恋ひをればわが屋戸の すだれ動かし秋の風吹く(巻4)
万葉の歌人額田王像=写真1=と歌碑がある市神神社で5月5日、恒例の額田王祭が催された。県内外から公募された15首が歌道上達を願って像に献詠された。
中嶋高名宮司(83)によるとこの像は、かって八日市の町衆がまつりに出した曳(ひき)山のシンボルだった。明治になって巡行が取りやめになり、しまわれたままだったのを1984年に彩色復元して拝殿に安置した。「その縁で学者らにより歌碑ができ、万葉の神社として知られるようになりました」 額田王といえば大海人皇子と交わした歌が有名だ。
あかねさす紫野ゆき標野(しめの)行き 野守は見ずや君が袖振る(巻1)
むらさきのにほへる妹を憎くあらば 人妻ゆゑにわれ恋ひめやも(巻1)
皇子ら一行が蒲生野に遊猟して1300年目の1968年5月5日、蒲生野顕彰会によって安土町境の船岡山で歌碑の除幕式が催された。蒲生野について諸説あったが、ほぼ真ん中に位置するなどから決まったという。
市辺駅からすぐ西にある丘の上の巨石に2首の歌碑がはめ込まれている=写真2。市教委で長く市史編集に携わった山岡静枝さん(56)は全国の研究者を何度も案内した。「歌を詠んだ場所は定かではありません。この周辺は水田に変わっていますがどことなく万葉の風情がある気がします」という。
歌碑発起人の1人だった薬師寺住職の渡辺守順さん(82)は自坊の境内に長歌の歌碑を立てた=写真3。
冬ごもり春さり来れば鳴かざりし(以下略、巻1)
「蒲生野といえば額田王。長歌の存在も知ってほしかったのです」