更新日:2007年4月18日
Vol.196:養老天命反転地(岐阜県養老町)県外編
写真2 写真3 写真4 写真5

「何ここ、変」なテーマパーク

 現代美術ファンや若者が全国から足を運ぶ、奇妙なテーマパーク=写真1=が岐阜県の養老町にあると聞き、訪ねてみた。入場口付近にある「場内はすべりやすく危険なのでヘルメットと運動靴を貸し出す」という看板に、いささかおびえながら足を踏み入れる。
 すり鉢のような形をしている場内は斜面で構成されており、傾いた地面を歩くのに一苦労する。歩きにくいのは、設計者がそれを意図したから。感覚を確かめるためだというのであるが、知らずに来た人は面食らうことが確実だ。1.8万平方メートルにおよぶ場内は、思わず首をかしげてしまうような不思議な建築物や物体であふれている。壁に切り取られ、半分に割られたオブジェのソファやベッド、家具=写真2=が無造作に点在しているかと思えば、日本や外国の地図が地面や天井に描かれている=写真3。日常生活の道具が無造作に投げ出されている風景は、震災など災害をほうふつとさせ、なにか穏やかでない雰囲気だ。

 「極限で似るものの家」「白昼の混乱地帯」など、それぞれの場所についたネーミングも実に個性的。「何ここ、変やー! おかしいんちゃう!」。子どもたちはぐるぐると駆け回りながら騒いでいるが、異質なものに出合った興奮で目は輝いていた。
 美術家の荒川修作と詩人のマドリン・ギンズの設計。「意識の発生する場」をめざすという、極めて哲学的な問いかけをもつ場なのである。詩人の谷川俊太郎はこの場所に対し「すべる よろめく ずっこける だが落っこちることは出来ない 飛び去ることも出来ない」(毎日新聞社『養老天命反転地』より)とうたう。安全で楽しいテーマパークとは一線を画し、よろめきながら体の限界に気づくという設計者の意図に、一筋縄ではいかないものを感じた。

写真5 おなかがすいたら、テーマパーク隣に見える白いテントをめざそう。飲食店の屋台が並ぶ「楽市楽座」がある。1本ずつ丁寧に炭火で焼いた養老名物、「清水」の焼きだんごを食べていた2人組をパシャリ=写真4。ひき割りのくるみが入った秘蔵の手作りみそがまぶされ、風味豊かだ。
 楽市楽座からさらに道ぞいに20分、名物のサイダーなどを売るみやげもの屋を冷やかしながら登っていくと、親孝行の昔話で有名な養老の滝がごうごうと水しぶきをたてていた。全国の名水百選に選ばれている「菊水泉」も途中の養老神社そばからわき出ており、水をくむ人でにぎわっていた=写真5。口にしてみると、見事なまろやかさ。「ここの水を飲むと、水道水が飲めなくなる」と語る岐阜県内の夫婦の言葉にうなずきながら、水の味わいを堪能した。
 
養老天命反転地はJR東海道線の大垣駅から、近鉄養老線に乗り換えて22分の養老駅下車、徒歩10分。入場料は一般710円。
問い合わせは(0584・32・0501)へ。

※この記事は、朝日新聞読者にお届けしている「あいあいAI 」(滋賀)に掲載されたものの転載です。

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