
奈良の鹿は「おじぎ」をするらしい──。そんな話を聞いたことがあり、半信半疑で奈良公園を歩いていると、最初に出合った鹿が私に向かってぺこりと頭を下げた。「うわさは本当だった!」と感動したのもつかの間、鹿の横には「鹿せんべい¥150」の看板。どうやらエサをおねだりされたらしい。
■天然記念物
公園では「シカ・フェスタ〜奈良公園は鹿の食卓〜」が催され、清掃活動やコンサートでにぎわっていた=写真1。「奈良のシカ」が天然記念物に指定されて今年で50年になることから、3年後の「平城遷都1300年記念事業」を支える「奈良2010年塾」の3期生約40人が企画し、鹿への日頃の感謝の気持ちを込めて開催した。
奈良の鹿と人間のかかわりは1000年以上前から続いており、現在は約1200頭が生息している。しかし、ゴミを食べて死んだり、交通事故に遭ったりする鹿が後を絶たない。そのため、財団法人「奈良の鹿愛護会」の6人が保護活動にあたり、事故があれば24時間態勢で駆けつけている。同会事務局長の池田佐知子さん(55)は「鹿も人間と同じように必死に生きています。将来は公園に車が入れないようにするなどして、鹿をそっと見守ることができるようになるのが夢です」と話してくれた。
事故で傷ついた鹿たちは、春日大社にある鹿苑(ろくえん)で保護されている。同社の祭神は鹿島神宮(茨城県)から白鹿の背に乗って御蓋(みかさ)山に降り立ったと伝えられており、朱塗りの建物につるされた万燈籠(まんとうろう)にも鹿の絵があしらわれていた=写真2。
■さまざまな国の言葉で大きいなあ
鹿と同じく奈良のシンボルとなっている大仏様=写真3=を拝むため、春日大社から20分ほど歩いて東大寺大仏殿へ。小学校の遠足以来だが、あまりの大きさにまたも圧倒されてしまった。外国人観光客も多く参拝しており、「大きいなあ」と感動しているような声がさまざまな国の言葉で聞こえてきた。
■名物茶がゆ
少し足を延ばし、一昔前の風情が残る奈良町(ならまち)へ。築180年の町家を活用した「茶房暖暖(のんのん)」で、茶粥(ちゃがゆ)御膳(1350円)=写真4=を注文した。茶粥は奈良の名物だが、ここではもち米が使われており、ほのかに甘みがある。かき餅や奈良漬けとの相性も抜群だ。店員さんの気さくな笑顔と香ばしい風味に、身も心もほっこりと満たされた。
近鉄奈良駅へは、JR大津駅から京都駅を経由し、約1時間。同駅から市内循環バスが約10分おきに発車。茶房暖暖(0742・24・9081)は、同駅から徒歩約15分。営業は午前10時〜午後5時、月曜休み(祝日は開店)。