


伊吹山のふもと、米原市春照で、円空仏が地元の人にひっそりと守られている。円空は、江戸時代に全国を行脚しながら、仏像を彫った伝説の仏師だ。生涯で刻んだ仏像の数は12万体ともいわれている。現存する約6千体の中で、貴重な墨書が残されているとして有名な十一面観音像だ。
この観音像は、もともとは「伊吹四大寺」の一つとして中世より栄えていた太平寺にまつられていた。昭和30年代に、太平寺集落が山の中腹からふもとに移ったとき、仏像も一緒に山を下りてきた。現在、大平観音堂の中で地元の円空仏保存会によって守られている。桜の一木から彫り出された、高さ180センチにも及ぶ大作だ=写真1。やさしい表情が魅力的で、安産の観音さんとして親しまれている。背面に書かれた墨字によると、円空が58歳である元禄2(1689)年、木を切り出してから4日目に完成したと記されているから、その早さに驚くほかない。
円空仏保存会の高橋繁さん(85)=写真2=は、幼少期を移転する前の太平寺で過ごした。琵琶湖が見渡せ、すばらしい夕日が眺められたという。「小さい頃は、寺が遊び場だった。円空の木端(こっぱ)仏は、手にとって遊んでいました」と語る。木端仏とは、大きな仏像を彫った後の残った木材で彫られた小さな仏像のこと。なんともぜいたくなおもちゃである。
観音堂のすぐそばには、伊吹山文化資料館がある=写真3。伊吹山の暮らしや自然、文化を学べる展示が豊富だ。昔から変わらないであろう伊吹山の風景に、悠久の時間を感じた。
大平観音堂へは、JR近江長岡駅より、湖国バスで「ジョイいぶき」下車、徒歩7分。円空仏の見学は要予約。三原モータース(0749・58・0250)へ。