更新日:2007年1月25日
Vol.186:岩間寺(いわまでら 大津市石山内畑町)
写真1 写真2 写真3 地図

本堂の隣に芭蕉の「古池や」

 「古池や蛙(かわず)飛び込む水の音」――松尾芭蕉がこの句を詠んだとされる池が大津のお寺にある。京都府との境、標高443メートルの岩間山頂に近い岩間寺=写真1。正式名を岩間山正法寺(しょうほうじ)といい西国三十三所の第12番札所だ。山頂まで車道が通じているが、正月休みで緩んだ体を目覚めさせるべく徒歩を選んだ。

 JR石山駅からバスで中千町へ。そこからくねくね曲がる坂道をひたすら上ること50分。寒空の下、到着する頃には汗が噴き出していた。毎日歩いてお参りに来る人もいるというから頭が下がる。寺は奈良時代に越前出身の僧・泰澄が開いたとされ、秘仏である本尊の千手観音は「汗かき観音」と呼ばれる。人々を救うため毎夜抜け出して駆け回り汗びっしょりで帰ってくる、というのが名前の由来だ。ほかに「雷よけ観音」や「ぼけ封じ観音」の呼び名もある。

 境内の京都側の斜面には日本一といわれるカツラの大木がそびえる=写真2。空に向かって高く伸びる枝はこけむしていて、何百年もここで根を張る大樹の静かな生命力を感じる。芭蕉の池=写真3=は本堂のすぐ隣にあった。「あの句は場所ではなく、修行をした後の悟りの瞬間を詠んでいるのだと思います」と副山主の田居妙淨さん(36)は言う。「悟りを開いた瞬間に沸々とわき上がる喜びを、カエルが水面に起こす波紋に重ねたのではないでしょうか」
 札所を巡る人にとって、京都から続く道は「犬戻り」の名が付くほどの難所だ。確かに上から眺めるとぎょっとするほど傾斜は急だが、「歩いてみたい」と思わせる不思議な魅力がある。今度はぜひ山越えに挑戦しよう、と心に決めた。

※この記事は、朝日新聞読者にお届けしている「あいあいAI 」(滋賀)に掲載されたものの転載です。

バックナンバーはこちら