更新日:2006年11月13日
Vol.182:木之本の観音巡り(木之本町石道など)
写真1 写真2写真3地図

「村の娘さんの姿」の観音像

「この十一面観音さまは、村の娘さんの姿をお借りになって、ここに現われていらっしゃるのではないか」。作家・井上靖が小説「星と祭」でこう記した観音像を訪ね、秋の木之本を歩いた。
 JR木ノ本駅から東へ約3.5キロ、コスモスが揺れる山あいに石道寺(しゃくどうじ)はある=写真1。無住のお堂を守るのは集落の人々だ。かつては年4回、集落の行事でだけ開帳されていたが、小説の発表を機に全国から人が訪れるようになり、住民が2人ずつ当番で参拝客を迎えている。
 「素朴で、優しくて、惚(ほ)れ惚れするような魅力」と小説で描かれる観音像は、11世紀の作。今も衣に朱色が残り、紅をさした唇は特に印象的だ。「井上先生はとても気に入られて年に1回はお見えでした。一緒に写真を撮ってくださる気さくな方でしたよ」と、当番の女性(80)は懐かしんだ。
 石道寺の北には紅葉の名所、鶏足寺=写真2(01年11月撮影・びわこビジターズビューロー提供)=がある。鶏足寺などの文化財が収蔵されている己高(ここう)閣と世代(よしろ)閣=写真3=に足を延ばした。こちらも住民の手で管理されている。案内してくれた高橋茂典さん(64)は「銭金で買えない宝物を持っていることは、村の誇りです」と語る。館内には鶏足寺本尊の十一面観音像や、七仏薬師如来像などが並んでいた。中には、焼き打ちから守るために土中に埋められて大きく破損した仏像もあり、この像が経てきた長い歴史を思いしばらく立ちつくした。
 
メモ:石道寺(0749・82・3730)へは木ノ本駅から湖国バス井明神下車、徒歩10分。拝観料300円。月曜休み。己高閣・世代閣(0749・82・2784)は無休で、拝観料は両方で500円。寺巡りには駅の観光案内所のレンタサイクル(500円)が便利。

※この記事は、朝日新聞読者にお届けしている「あいあいAI 」(滋賀)に掲載されたものの転載です。

バックナンバーはこちら