「菜の花や 月は東に 日は西に」−江戸時代の俳人与謝蕪村がこの句を詠んだと伝えられる摩耶山。正岡子規や泉鏡花ら多くの文人に親しまれた山を訪ねてみた。
阪急王子公園駅から、北へ20分歩くと摩耶ケーブル駅。ケーブルカー(写真1)に乗り、標高451メートルの虹の駅へ。最大傾斜は29度。日本でも有数の急斜面を走り、5分ほどかけて965メートルのケーブルを上る。そのあとはロープウエー。全長856メートル。約5分で標高682メートルの星の駅に到着した。
駅から出るとすぐ、展望台が広がる。「掬星台(きくせいだい)」。この展望台から見た夜景は、日本3大夜景に数えられる。この場に立つと天の星がすくえそうだ、と先人が言ったためその名前がついた。神戸の町並みが一望でき、播磨灘から大阪湾まで見渡せる(写真2)。大パノラマに昼間でも引き込まれてしまいそうだ。
掬星台から北へ10分ほど歩いたところに、天上寺がある。空海が唐から持ち帰った釈迦(しゃか)の母親・摩耶夫人(まやぶにん)の像を安置した寺だ。摩耶夫人の像がある山ということで、「仏母摩耶山(ぶつもまやさん)」と呼ばれるようになり、略して摩耶山となったという。
門から100段以上ある長い階段を上って、標高717メートルの摩耶山山頂へ。
寺の広さは約2万平方メートル。摩耶夫人堂のほか、同寺の開祖・法道仙人がインドより持ってきたという本尊・十一面観音が安置されている金堂(写真3)がある。本尊は33年に1度開帳される。普段は扉が閉まっており、210センチの観音像が6体、255センチの観音像が1体、扉の前に並んでいる。金堂の横にある摩耶夫人堂には穏やかな顔をした摩耶夫人の像(写真4)があるが、これは1989年に作られた。空海が持ち帰った本物は、秘仏として公開していない。摩耶夫人の像を安置するのは、日本でここだけという。
同寺が開かれたのは、大化2(646)年。以前は1キロほど離れたところにあったが、1976年放火により焼失。法道仙人が最初に同寺を開いたとされる現在の場所に1985年再建された。
「摩耶山は信仰の山。ゆっくりと時間を過ごして欲しい場所です」と、同寺副住職の伊藤浄眞さん(55)。レジャー施設の多い六甲山系の他の山々とは、別の空気を持った山だと感じた。
■まやビューライン(078・861・2998)
ケーブル線 片道大人430円、小学生以下220円。ロープウエー線 片道大人430円、小学生以下220円。冬季は火曜定休。
■ 摩耶山天上寺(078・861・2684)。