北条鉄道の発着点、北条町駅の北西にある住吉神社、酒見(さがみ)寺の辺りの町並みには、昔、参詣(さんけい)者で賑(にぎ)わった門前町の面影が残る。一帯は古くから山陽・山陰を結ぶ交通の要衝として栄えた「北条の宿(しゅく)」でもある。加西市歴史街道ボランティアガイド水田加代子さん(57=写真1)に案内してもらいながらゆっくり歩いた。
北条栗田線(県道369号)沿いにある三井住友銀行の支店の角を西へ曲がると、車が1台通れるぐらいの細い道になる。地元で御旅町、御幸町と呼ばれる一帯にも、宿の名残を感じる。北条町駅から約15分で、立派な楼門がある酒見寺に到着。水田さんによると、住吉神社に詣でた行基菩薩(ぼさつ)が「この地に寺を建て、民衆を救ってくれ」という神のお告げにより、745年同寺を建立したと伝えられている。長い歴史の中でたびたび兵火にあったが、江戸時代初期、現在の伽藍(がらん)が再興された。国の重要文化財に指定されている多宝塔(写真2)は「二重塔」で上の屋根はひわだぶき、下は本瓦ぶきという珍しい様式。隣の住吉神社は、4月に行われる播州三大祭りの一つ、北条節句祭りで知られる。
住吉神社から約5分の羅漢寺へ。古くから「親の顔が見たけりゃ北条の西の五百羅漢の堂にござれ」とうたわれている、1体1体違う表情をした素朴な野の仏(写真3)が迎えてくれた。亡き人の面影を探すのか「案内はいりません」と断って、1人でじっと仏を見つめる人もいるという。「地元の人にとって、羅漢さんはあってあたり前。皆さんが来てくださって初めて、いいものなのかと見直すんです」と、山田恵純住職。
少し戻り、横尾に入ると、曲がった道路や虫籠窓(むしこまど)、格子戸など往時をしのばせる旧家の家並みが現れた(写真(4))。病除地蔵尊の傍らには、享保13(1728)年と記された同市最古の道標がある。さらに「左 明らくじたん□ 右 やしろ大坂京」と書かれた天保7(1836)年の道標は、歩いてきた道が西国街道の脇往還として多くの人に利用されていたことを示している。
ガイド(無料だが拝観料などの負担あり)の申し込みは、同市観光まちづくり協会(0790・42・8823)▽羅漢寺(0790・43・0580)。拝観料200円。