電車の一駅分を歩いてみよう。ふと思い立ち、よく晴れた日、山陽電車の曽根駅と大塩駅の間をぶらぶら散歩した。歴史に触れることができ、眺めのすばらしい場所もあって格好のハイキングコースだった。
曽根駅から3分で曽根天満宮(写真1)。主祭神の菅原道真公は901年、太宰府へ左遷された。その途中、伊保港に船を寄せ、天満宮西の日笠山に登られた。そして「我に罪なくば栄えよ」と祈念し、山の松を天満宮へ植えられた。これが曽根の松で、現在も幹が保存されている。
日笠山へ向かう途中の国道250号沿いのがけに、高砂市指定文化財の「黒岩十三仏」(写真2)がある。岩盤を垂直に削り、高さ70センチ、幅177センチの横長の枠の中に、上下2段に13の石仏が彫られている。1505年製作の銘が刻まれたこれらの仏は、時光寺(高砂市)の開祖時光上人が行の傍ら岩壁にツメで刻んだもの、と伝えられている。現在はっきりとした姿をとどめるのは5体。行き交う車のそばで、静かなたたずまいを見せる磨崖仏(まがいぶつ)にしばし見入った。
黒岩十三仏から住宅地を歩くこと約10分。曽根町と大塩町の境にある日笠山(62.4メートル)は桜の名所として知られ、春になると多くの人が訪れるという。取材した日は、見晴らしのいい頂上で家族連れがお弁当を広げていた。若いお母さんは「子どものころ、遠足で来て以来。今日は子どもを乗せて自転車で上ってきて、えらい目にあった」と笑っていた。遠く淡路島や家島の景色を見に来た夫婦、散歩しているおばちゃんら、予想以上に多くの人が訪れていた。道真公が休んだという「腰掛岩」も残っている。
帰りは、のじぎく散歩道の一部を歩いて大塩へ抜けた。この地には、1925年植物学者の牧野富太郎が「日本一」の折り紙をつけたというノジギクの群生地があった。今は地域の人たちが保存活動に力を入れ、ノジギクの名所として知られている。盛りは過ぎていたが、キク特有の強い香りが風に乗って流れてきた。牧野が命名したという「キバナノジギク」(写真3)もかれんだった。
約15分歩いて大塩駅に到着。少し南下して大塩天満宮(写真4)にも立ち寄った。ここの御祭神も道真公。都市計画道路の建設計画に伴い、1998年に遷宮祭を執り行った同宮は、秋祭りの獅子舞(県重要無形民俗文化財)が有名。